私を壊して そしてキスして
凌雅さんが他のお客様に呼ばれる。
着物で歩く姿もしっくりきていて風格も感じられ、小さいころのやんちゃ姿なんて想像できない。
「あいつ、思ったよりしっかりしてるじゃん」
「素敵な人ですね。私の想像とは違いました」
いたずらして叱られていた彼らも、こんなに素敵な大人になって。
「あ、あの人、あいつの彼女」
入り口でそっと彼の姿を見ている女性に気が付いた翔梧さんはそう言った。
「入られないのかな?」
「どうだろう。彼女もこの世界とは無縁の人だからな」
「私……ご挨拶してきます」
「おい、菜那……」
きっと彼女も私と同じ。
愛する人がこんなきらびやかな世界の人だと、ちょっぴり自信がなくなってしまうんだ。
だけど、そんなこと気にすることないって、彼の奥さんになってよく分かったから。