私を壊して そしてキスして

「私も、ただのOLだったんです。
だから最初は戸惑いました」

「そうなんですか?」


彼女の顔が少し明るくなったように思える。


「私、柳瀬がこんな家の出だって少しも知らずに恋をしました。
だから立派な家を見ただけで、正直後ずさりしたんです」


私が笑ってみせると、彼女も小さく笑い声をあげた。

きっと彼女にも同じような経験があるに違いない。
初めて凌雅さんがそういう立場の人だと知ったときに。


「でも、そんなこと関係ないんですよ。
彼がそういうことを気にする人なら、私と付き合ったりなんてしなかったと思います。

凌雅さんもきっともそうです」


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