私を壊して そしてキスして

「幸せだな。菜那の隣で目覚める朝は」


彼がそう言いながら、私の髪を優しく撫でる。

彼に抱きしめられていることが恥ずかしくてたまらないのに、そのゆっくり流れる時間に心まで溶かされそうだ。


「あっ、私、家に……」


何も連絡せず外泊してしまったことを思い出すと、彼が私を更に抱き寄せる。


「電話しておいたよ。気分が悪いみたいだから、ビジネスホテルに泊まらせますって。嘘、吐いちまったな」


そんなことまで……。


「ごめんなさい、私……」


少し泣きそうになってそんな言葉を口にすると、彼はクスッと笑って私を見つめた。



< 36 / 372 >

この作品をシェア

pagetop