私を壊して そしてキスして

「菜那、さすがだな」

「何がですか?」

「あいつらもうまくいくといいんだけど」


彼女のこと……。
だってほんの少し前までの私と同じだったから。


「きっとうまくいきますよ」



それから私たちは、彼の運転で部屋に帰った。


「菜那、ごめんな」

「えっ?」

「もっと早く式を挙げたいんだけど」

「そんなこと気にしていません」


もう籍は入っているし、あなたのお嫁さんに変わりないから。


「翔梧さん。継がなくて、後悔はないんですか?」

「全くな。そういう家に産まれたからって、才能があるとは限らない。
昔からあいつとはよく悪さをしてたけど、あいつの腕は嫉妬するほどだった。
庭の花を勝手に切ってその辺に突き刺して。
でもあいつのはちゃんと形になっていて、多分親父もそれに気づいていた」


目を細めて昔のことを語る彼。


< 360 / 372 >

この作品をシェア

pagetop