私を壊して そしてキスして
「菜那、さすがだな」
「何がですか?」
「あいつらもうまくいくといいんだけど」
彼女のこと……。
だってほんの少し前までの私と同じだったから。
「きっとうまくいきますよ」
それから私たちは、彼の運転で部屋に帰った。
「菜那、ごめんな」
「えっ?」
「もっと早く式を挙げたいんだけど」
「そんなこと気にしていません」
もう籍は入っているし、あなたのお嫁さんに変わりないから。
「翔梧さん。継がなくて、後悔はないんですか?」
「全くな。そういう家に産まれたからって、才能があるとは限らない。
昔からあいつとはよく悪さをしてたけど、あいつの腕は嫉妬するほどだった。
庭の花を勝手に切ってその辺に突き刺して。
でもあいつのはちゃんと形になっていて、多分親父もそれに気づいていた」
目を細めて昔のことを語る彼。