私を壊して そしてキスして
「今日、一緒に帰ろう」
「一緒に?」
彼の思わぬ言葉に唖然とすると、私の頬に手を伸ばして、ニッコリ笑う。
「もう、帰らないんだろ? 部屋も探さないとな。
俺が責任を持って菜那を預かる。だから、きちんと許可をもらう」
「でも……」
彼の言うように、少しあの場所から逃れられれば、自分を取り戻せる気もする。
このまま仕事を失ってずっとあの家にいるなんてこと、絶対にできやしない。
ただ苦痛から逃れる術だけを考えるだけでいっぱいいっぱいだった私。
これから先のことなんて、考える余裕すらなかったから。
だけど、そんなの私の我儘で、彼がそれに付き合うなんて――。