私を壊して そしてキスして
予想外に彼の喜んだ顔を見た私は、なんだか安堵していた。
あんな醜態をさらした私が、こんなことくらいでお詫びできるとは思ってはいない。
それでも、彼が喜んでくれるのなら、少しは役に立てる気がする。
結局、着替えのなかった私は、彼のダボタボの服を借りて洗濯をし、近所のスーパーには彼が行ってくれた。
「菜那、トマトはいくついるんだ?」
「一つでいいですよ?」
「パンは何枚切り?」
「翔梧さんの好きなので」
スーパーから電話をかけてきた彼は、仕事の時とはまるで違う顔。
気が付けば、クスクス笑っている自分がいる。
こんなこと、久しぶりだ。