私を壊して そしてキスして

「菜那?」


ドア越しに彼の声が聞こえる。


「菜那、大丈夫か?」

「は、い」

「ここを開けろ」


そんなの無理だ。
翔梧さんにこんな姿、見せたくなんかない。


「菜那、開けろ」

「無理です」


私がそう答えると、彼はドアに体当たりしてきた。
ドンドンと何度も繰り返されるその行為。それは次第に強くなっていく。


「翔梧さん?」

「菜那が開けないのなら、俺が開ける」


彼のそんな必死な様子に、声を上げて泣いてしまう。

私のことを、こんなにも考えてくれる人がここにいる――。


私はそっと鍵に手を伸ばした。


< 47 / 372 >

この作品をシェア

pagetop