私を壊して そしてキスして
「菜那?」
ドア越しに彼の声が聞こえる。
「菜那、大丈夫か?」
「は、い」
「ここを開けろ」
そんなの無理だ。
翔梧さんにこんな姿、見せたくなんかない。
「菜那、開けろ」
「無理です」
私がそう答えると、彼はドアに体当たりしてきた。
ドンドンと何度も繰り返されるその行為。それは次第に強くなっていく。
「翔梧さん?」
「菜那が開けないのなら、俺が開ける」
彼のそんな必死な様子に、声を上げて泣いてしまう。
私のことを、こんなにも考えてくれる人がここにいる――。
私はそっと鍵に手を伸ばした。