私を壊して そしてキスして

「辛かったな、菜那」


彼のそんな言葉に素直に頷く。

「もう、大丈夫だ」


彼がそう言ってくれると、本当に私には未来があるように感じる。
小さな子が母親の愛にしがみつくように、私も彼に……。


「翔梧さん」

「ん?」

「私、変われるかな?」

「当たり前だ。俺が必ずそうさせる」

「怖いの。怖くて仕方ないの」


私がそんな言葉を漏らすと、彼は私の髪に手を入れながらゆっくりそれを梳いた。


「わかってる。焦らなくていい。深い傷はすぐにはよくならないんだぞ? 
だけど人には自分で治す力がある。心だってそうだ。
俺が飛び切り効く薬になるから。だから、俺を信じろ」


彼のそんな言葉に、私は小さく頷いた。


< 49 / 372 >

この作品をシェア

pagetop