私を壊して そしてキスして
「少しも食べられないのか? 食べられるものは?」
リビングに戻ると、彼の食べかけのトーストが目に入る。
彼だって食事の途中だったんだ。
「フルーツなら少しは」
私がそういうと、自分の皿を差し出す。
「これも食えるか? 菜那のおかずと交換だ」
「はい」
無理に「食べろ」と言わない彼の優しさを感じる。
食べることが怖い。
そんな感情がこの世にあることを初めて知った。
目の前に出されたオレンジに手を伸ばすと、ゆっくりそれを口に運ぶ。
「待った」
口に入るほんの少し前に、彼がそう言いながら私の手首をつかんだ。
「少し、話をしよう」
「えっ?」
翔梧さんはそう言いながら、私の顔をじっと見つめた。