私を壊して そしてキスして

彼の言葉に、もう何度救われてきたのだろう。


確かに私は、靖司を愛希に奪われたとき、愛希に激しいコンプレックスを抱いた。

そして、そのせいで彼は私を裏切ったのだと。


一番わかりやすいのが体型だった。

おそらく愛希と私は同じくらいの身長だ。
だけど、愛希のほうが何キロか体重が軽い。

そのたった1,2キロが私には許せなかった。
だから痩せなくてはと思った。そして、食べられなくなった。


ポロっと零れた涙がテーブルの上に落ちる。

そんな馬鹿なことで、こんな風になってしまった自分の愚かさ。
そして、こんな風に迷惑をかけてしまって――。


「菜那、好きなんだ」


彼がもう一度そう言ってくれたとき、手で顔を覆いながら泣きじゃくった。




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