私を壊して そしてキスして
いつの間にか彼に抱きしめられていた。
ゆっくりゆっくり背中を撫でてくれる彼の手から、温かい気持ちまで伝わってくる気がする。
「好きだよ、菜那」
私がようやく泣き止んだ頃、彼は私を抱き寄せながらそうささやく。
彼の胸にギュっとしがみついて、そっと目を閉じる。
あの時、あまりにショックで、すべて自分が悪かったのだとそう思おうとした。
それが一番楽だったからだ。
だけど……そう思うことは、あまりに過酷だった。
そして、いつしか自分を見失ってしまって。
気が付けば、愛希より痩せなければと思いこんで――。
前のままの私でいいといわれることで、少し背中に背負った荷物が降ろせた気がする。
もう一度、前のような健康な「心」を取り戻せるだろうか。
その朝、私はオレンジを吐かずに食べることができた。