私を壊して そしてキスして

そっと目を閉じると、ずっと一緒に仕事をしてきた彼の匂いに癒される。


こんなに近くに、こんなに私を想っていてくれている人がいたのに、気がつかなかった私。

それだけ、靖司に夢中だったんだろうか。



彼の車の助手席は、何度か乗せてもらったことがあった。
仕事で遅くなったとき、送ってくれたこともあったから。

だけど、何ともいえない今の立場で、ここに座ることはドキドキしてしまう。


真直ぐに前を見て真剣に運転する眼差しは、仕事の時と同じように、キリリとしていて、素敵だと思う。



「初めまして。柳瀬翔梧と申します。香坂さんの上司をしております」


突然、客人を連れて家に帰ってきた私に驚く父と母。



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