私を壊して そしてキスして
「昨日は、大切な御嬢さんを引き留めてすいませんでした。
私も、呑んでしまいまして、送り届けることができず……」
「いえ、最後ぐらい、皆さんとワイワイやりたかったでしょうから」
終始、和やかに交わされる会話。
「あの、香坂君には妹さんがいらっしゃるとお聞きしたのですが」
彼が私のほうに一瞬視線を投げかけてから、そう言う。
「はい。でも今日は朝から出かけて行って。
この子とは違って活発な子で。菜那にも少しは見習ってほしいところですが」
父のそんな言葉に項垂れる。
やっぱり私は、愛希には何も敵わないんだって。
「そんなことはありませんよ。菜那さんは会社の中でも人気者でした。
彼女が辞めてしまうことを、みんなが残念に思っています」
そう言う翔梧さんの方を思わず見ると、彼は一瞬ニコッと笑ってくれた。