私を壊して そしてキスして

「昨日は、大切な御嬢さんを引き留めてすいませんでした。
私も、呑んでしまいまして、送り届けることができず……」

「いえ、最後ぐらい、皆さんとワイワイやりたかったでしょうから」


終始、和やかに交わされる会話。


「あの、香坂君には妹さんがいらっしゃるとお聞きしたのですが」


彼が私のほうに一瞬視線を投げかけてから、そう言う。


「はい。でも今日は朝から出かけて行って。
この子とは違って活発な子で。菜那にも少しは見習ってほしいところですが」


父のそんな言葉に項垂れる。

やっぱり私は、愛希には何も敵わないんだって。


「そんなことはありませんよ。菜那さんは会社の中でも人気者でした。
彼女が辞めてしまうことを、みんなが残念に思っています」


そう言う翔梧さんの方を思わず見ると、彼は一瞬ニコッと笑ってくれた。



< 57 / 372 >

この作品をシェア

pagetop