私を壊して そしてキスして
「菜那、まさかこの人と……。それで靖司君と」
父が怒りに震えながら、言葉を吐き出す。
「いえ。それは違います。その辺りの事は少しお聞きしました。
正直に申します。
私は、彼女に好意を持っています。
ですが、それを彼女にお話ししたのは昨日です。もちろん彼女の方にそういう感情はありません。
彼女を無理矢理、恋人にしようとは微塵にも思っていません。
ただ、放っておけない。
このままでは彼女は、傷を深くするだけです」
翔梧さんが透き通るような目で、父と母を真直ぐ見つめながら、たじろうことなくそう言ったとき、私は泣きそうになってしまった。