私を壊して そしてキスして

「菜那、まさかこの人と……。それで靖司君と」


父が怒りに震えながら、言葉を吐き出す。


「いえ。それは違います。その辺りの事は少しお聞きしました。

正直に申します。
私は、彼女に好意を持っています。
ですが、それを彼女にお話ししたのは昨日です。もちろん彼女の方にそういう感情はありません。

彼女を無理矢理、恋人にしようとは微塵にも思っていません。

ただ、放っておけない。
このままでは彼女は、傷を深くするだけです」



翔梧さんが透き通るような目で、父と母を真直ぐ見つめながら、たじろうことなくそう言ったとき、私は泣きそうになってしまった。






< 59 / 372 >

この作品をシェア

pagetop