私を壊して そしてキスして
こんなことしたって、翔梧さんの得になることなんて何一つないのに――。
むしろ、批判の矢面に立ってしまうかもしれないというのに。
ただ、私のためだけに行動を起こしてくれている彼が、とても近く感じる。
「そんなこと、信じられるわけないじゃないか。
菜那。お前が婚約を破棄したのは、こういう事なのか?
なんて娘だ。靖司君に合わせる顔がない。なんと謝ればいいのか。
お前は、香坂家の恥さらしだ」
「違うの、柳瀬さんとは本当に……」
だけど、父がひどく怒ってしまって、翔梧さんをじっと睨む。
「あんたのせいで、家は滅茶苦茶だ。もう、帰ってくれ。二度と顔も見たくない。菜那、お前もだ」
父がそのテーブルを離れようと立ち上がる。