私を壊して そしてキスして
「本当に、菜那さんに非があったのがどうか。
ご自分の娘さんを、信じてはあげられませんか。
菜那さんは、真剣に恋をしてきただけ。
そして、傷ついただけ。
彼女が多くは語らないのは、何か理由があるからだとは思いませんか?」
怒る父に反して、冷静な声でそう続ける彼。
「彼女がもし婚約者と破局して、今、私といて幸せなら、こんなに痩せたりするでしょうか」
彼の放ったその一言は、その場の雰囲気を一変させた。
「菜那……」
ずっと黙っていた母が、少し苦しそうに言葉を吐きだす。
「お母さんは、あなたが幸せになってくれるのを望んでいるの。
ずっと気になってた。
あなた、食事の後、トイレに駆け込むのは、もしかして……」
気がつかれていた――。
分からないようにしていたつもりだったのに。