私を壊して そしてキスして

「菜那が、俺のことを本当に欲しくなったら、その時は壊してやる。
それまで、俺が我慢しないとな」


フッと笑いながら、私を抱き寄せる。


「菜那、あいつの事は忘れろ。
必ず、お前は幸せになれる。俺と一緒にな」

「翔梧さん……」


彼の鼓動が少しずつ落ち着きを取り戻していくのが分かる。

あんなに火照っていた体も、それと共に赤みが引いてきて、彼に抱き留められているのが少し恥ずかしくなる。


幸せに、なれる。
なれる……。

そう自分に暗示をかける。
きっと彼がいてくれれば、私は――。


だけど、こうして抱きしめてもらわなければ、私は壊れてしまっていたに違いない。



靖司と愛希のあんな現場を目撃して……。

彼らは、キスを交わしていたから――。



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