私を壊して そしてキスして
「えっ、買うんですか?」
「菜那にも、これだけの幸せがやってくるように」
そう言って笑った彼に、思わず涙が出そうになった。
幸せ……。
私にもまたやってくるだろうか。
私が財布に手を伸ばすと、それより早くカードを出してしまう彼。
「いえ、私が」
「だって、俺のもあるだろ?」
そこで気がついた。
彼が自分の分もといったのは、私に払わせないようにするためなんだ。
確かに収入のあてがない私に、今は引っ越しというお金のかかることもあって、全く余裕はない。
コツコツためてきたお給料だって、そんなにあるわけじゃない。
きっとそこまで見越して……。
「ありがとうございます」
私は素直にその行為に甘えた。
どんなに遠慮したとしても、彼は譲らないと思ったから。