私を壊して そしてキスして
ウォータークローバーだけを私に持たせて、あとは荷物を持ってくれた彼と、駐車場に向かう。
「あれ? 柳瀬係長?」
突然呼び止められたその言葉にドキッとして、思わずクローバーを落としそうになる。
それが、聞きなれた声だったからだ。
一瞬私をチラッと見た彼が、ゆっくり振り向いた。
「森本か」
恵美さんだ……。
翔梧さんと一緒のところを見られるなんて、何だか気まずい。
こんなことがあるかもしれないと予想できたはずなのに、まったく無防備だった私。
彼と出掛けたりしては、いけなかった。
だって、私は、婚約しているはずなんだから――。
今頃幸せに、別の男と……。