私を壊して そしてキスして
「こんにちは。あれ、彼女ですか? ん?」
彼が私を隠すように前に立ちはだかってくれたのだけど、一瞬遅くて。
「菜那?」
恵美さんに名前を呼ばれて、振り向かないわけにいかなくなってしまった。
「――どうして、この組み合わせ?」
恵美さんがそう言うのも仕方がない。
結婚目前の私が、他の男の人と買い物なんて。
「付き合ってるからだ」
その時、彼の口から飛び出した言葉に、恵美さんも私も目を丸くする。
「なん、で? 菜那は結婚……」
「俺が奪った」
彼のその一言に、何も言えなくなった恵美さんは、ただ唖然と私と翔梧さんを見つめている。