私を壊して そしてキスして
「行くぞ、菜那」
私の腕を引っ張って、その場を離れる彼。
どうして?
そんなこと言ったら、彼の立場は悪くなるのに。
婚約者のいる女を、奪った男……。
そんな噂が広まったりしたら、彼は悪者になってしまう。
分かってる。
きっと私の結婚が破談になったことは、すぐに広まる。
その時、私が惨めにならないようにって、きっと配慮してくれたんだ。
でも、そんなに甘えてばかりで、私……。
「翔梧さん、私、恵美さんに本当の事……」
「本当の事だろう。俺がお前を奪ったのは」
まるで何事もなかったかのように、スタスタ歩く彼。