私を壊して そしてキスして

好きなのかどうか……。

本当のことを言えば、まだよく分からない。

もしかしたら、傷を癒すために彼にしがみついているのかもしれない。


けれど、翔梧さんのこの温もりを離したくない。

とても身勝手な気持ち。
真剣に私を好きだと言ってくれる彼を、まるで利用しているような。

それは分かっている。
でも、離したくない。



翔梧さんと交わしたキスは、どのキスにも愛が詰まっていたと感じる。

送別会の帰りの初めてのキスは、血が吹き出していた私の心の傷に薬を塗ってくれた。

そして、あのキス――靖司と愛希を見てしまった時の、あの荒々しいキスは、私が凍りつかないように温めてくれたのだ。





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