野良猫にも希望はある?
 
「記憶はどう?少しは戻った?」

 僕は無言を貫き、ただ首を横に振った。

「……そう」

 真結美さんは、悲しげというか哀れみというか、そんな表情で僕を見つめている。

 無言を貫いた僕は、お茶目心に火が着いた。

「〝食事中は黙れ!〟では?」

「あら、あたしと喋るのは嫌なの?」

「………うっ!」

 真結美さんは目をキッとさせて、僕を睨み返してきた。

 真結美さんの鋭い視線とセリフが、僕の心臓にダブルヒットした。

 なんてこった、お茶目心のつもりが、地雷を踏んでしまった。

 真結美さんは、無言でトマトをフォークで差して、口に運んだ。

 モットーを貫いただけなのに……このやるせない気持ちは何っ?僕が悪いのか?!

 そして僕は、この日を境に封印する事にした──お茶目心を。
 
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