野良猫にも希望はある?
 
「何者かに睡眠薬を飲まされたとか、記憶を消されたとか、毛布にくるまって全裸で放置されたとか、今更考えても仕方がない事だよ。君にとって今大事なのは、現実と向き合って、前向きに生きる事だよ」

 真結美さんは、僕が考えていた内容まで、見事的中させてしまった。

〝この人に隠し事は無理かもしれない〟と僕は心底思った。

 僕は持っていたフォークを置くと、深い溜め息を吐いた。朝食の目玉焼きは、まだ半分以上お皿に残っていた。

「ん?ほうひはお?ほう、ほひほうはま?」

「…………」

 真結美さん……喋りながら食べるのは止めてほしい。美人が台無しだ。

 僕は、違う意味で深い溜め息を吐いた。
 
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