野良猫にも希望はある?
 
「由奈……ちゃん?」

 僕は少女と猫に近づいて、訊ねてみると、「は、は、はいぃぃぃ―――っ!」と、由奈ちゃんは直立して、裏返った声で返事をした。

「………………」

 猫の方はニィーっと笑った──ような……気がした。気のせいか?

「しゅ、諄さん……ですか?」
「え?……あ、うん」

 僕は少し間をおいてから頷いた。

「その黒い猫は由奈ちゃんの?」

 僕は黒い猫を指で指すと、「コゲチャの事ですか?」と由奈ちゃんは猫の頭を撫でた。

「コゲチャ?」

「はい。この子、基本は黒毛なんだけど……所々ですが茶色い毛が生えてるんで、私は《コゲチャ》と呼んでいます」

 へえー、あ、本当だ。よく見ると茶色い毛が生えてる。なるほど、黒と茶色で《コゲチャ》か。考えたな由奈ちゃん。
 
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