くだらない短編集
からふる



空から降る雨は水色。少女の差す傘は橙色。黄色の長靴が、青色の水溜まりに波紋を広げた。ばしゃん、と透明の水飛沫。髪の毛は柔らかい赤茶色。草は黄緑で、木は萌葱色。ピンク色のコンクリートを、彼女は踏みしめて歩く。高層ビルのクリーム色が、立て掛けられた看板の極彩色を中和しようとしている。

鼻歌は虹色に、世界を染め上げる。傘を持つ反対側の手には黄色のひまわり。少女の愛した男の、好きな花。空振り三振をして泣いた彼の青春時代の黄金色の背番号。記憶はセピア色だ。少女はスキップをしながら、道を行く。点滅している紅色の信号機。空は不思議と快晴で、稲穂色の狐の嫁入りだ。少女の差す傘は橙色。空から降る雨は水色で。彼女の黄色い長靴が、静かに動きを止めた。ビー玉の様な少女の瞳が、道路の端に置かれた紫色の花を捉える。何処を探しても、男の、優しい太陽の様な背中は無くて。世界は総て、無機質な白に、変わった。


■からふる

だから絵は未だ、未完成なの。


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