くだらない短編集
仕方ない
■仕方ない
口の中の感情を咀嚼する。味は素っ気ない。ゴムを噛んでいる気分だった。きゅ、と弾力性のある物質に、歯が食い込む。滑らかな表面の舌触りは心地良いものではない。
けれど理性は口を揃えて言う。
正義なんて馬鹿馬鹿しい、と。
瞼を下ろして、世界と自身を遮断する。きゅ、ともどかしい音がした。無味無臭のゴムが口の中で悲鳴をあげた。