くだらない短編集



■鈴


ちりん、と錆び付いた鈴の音が鳴る。子供が駆ける。笑い声。舞ったのは落ち葉。紅色が視界に広がる。前へ行くことを阻むかの如く、舞い散る落ち葉は死に逝く蝶に似ている。こっちへおいでよ、と誰かの口が動く。少女は、待って、と手を伸ばす。影が伸びる。ちりん、ちりんと鈴が鳴る。

そうして、誰も居なくなる。

女はそこに立っている。伸ばした手は、今も空っぽのまま。



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