くだらない短編集
飛び降り自殺
今日も、また僕は君を殺してしまう。
■飛び降り自殺■
世界が崩壊して逝く音がする。蒼が白を、塗り潰してしまう。夏の抜ける様な鮮明な空が、鏡に映る君の綺麗な瞳を突き刺してしまった。逃げ切れない。其処まで来ている。君が手を広げる。空を抱く、十字架の如く。手を広げる。
三、二、一と誰かの唇が動いた。
世界に飽和していく、白。風が下から唸りを上げて這い上がって来る。はためく白いブラウスに、僕は手を伸ばす事さえ出来ない。
君が振り向いて僕を見た。黒い瞳に決意が浮いていた。
少しずつ身体が傾倒していく。裸足とコンクリートがスローモーションで離れて行く。広げられた両手が翼のように、風を受け止める。ゆっくりと、ゆっくりと。白が視界から消えて逝く。もう戻らない命の行方も、告げぬまま。
君が振り向いて僕を見た。その顔は僕に酷似していた。