バイナリー・ハート


 いつもは落ち着き払っているランシュの、こういう素の表情はロイドにとっては、やけに珍しかった。


「こんなラブラブ夫婦と一緒に住んでて、胸焼けしねぇ?」


 ソータの問いかけに、ランシュは不思議そうに、少し首を傾げる。


「ラブラブ? 確かに仲良しだけど、普通だと思うよ」
「普通じゃねーだろ。目の前で平気でキスしようとするし」
「キスって、挨拶の、でしょ?」


 キョトンとするランシュに、ソータは絶句して大きくため息をついた。


「クランベールって、こういうとこ、オウベイ(欧米)かって思うよな」


 ランシュはまだ不思議そうな顔で、ソータに尋ねた。


「ソータはユイにキスしないの?」

< 122 / 263 >

この作品をシェア

pagetop