バイナリー・ハート
ソータは大げさにのけぞって答える。
「しねーよ、そんな事! 想像しただけで鳥肌立った」
「私だって絶対イヤよ」
ユイもすかさず同調する。ユイにまで否定されて、ランシュは益々わけがわからないという表情で、さらに追及する。
「なんで?」
「ニッポンじゃ、挨拶でキスはしないんだよ。たとえ唇じゃなくても、親密な関係にある男女がプライベートな空間でしかしないの。普通、人前ではしないし、自分の親兄弟とキスなんてありえねーし」
「ふーん。そういう習慣なんだ」
ランシュはやっと納得して頷いた。
ロイドも胸中で密かに頷く。
ランシュの前ではよくて、ソータの前ではダメな理由がやっと分かった。