バイナリー・ハート
「サッカーゲーム」
「あんた、これを真夜中までやってたの?」
「いや、オレがやってたのはRPG。ランシュに日本語は読めないからさ、持ってきたソフトの中で出来そうなの、これしかなかったんだ」
「ふーん。でも気に入ったみたいね」
ゲーム画面を夢中で見つめるランシュに、結衣は目を細める。
マカロンが焼き上がるまでの間、結衣も蒼太と一緒に、ランシュを挟んでゲーム画面を眺めた。
当然の事ながら、ランシュはサッカー自体を知らない。
画面上でオフサイドフラッグが上がったり、イエローカードが出たりするたび、蒼太がルールの説明をしていた。
しばらくそうしていると、オーブンが焼き上がりのアラームを鳴らした。
結衣は席を立ち、
「キリがいいところで中断してね。お茶にしよう」
と言い残して、キッチンへ向かった。