バイナリー・ハート


 焼き上がったマカロンを、小さな扇風機の前で冷ましながら、お茶を淹れる。

 程よく冷えたものを皿に並べ、お茶と一緒にリビングに運ぶと、二人はゲームを終えて談笑していた。

 結衣がテーブルの上に置いた皿を見て、ランシュがおもしろそうに笑う。


「本当だ。マカロンに似てるね」
「でしょ? でも、マカロンが、似てるのよ。こっちが本物」
「そうだったね」


 三人でお茶を飲みながら、マカロンをつまむ。

 ランシュは「甘くておいしい」と言いながら笑った。

 蒼太は口の中に張り付くのが苦手だと文句を言いながらも、一つ食べ終わると次に手を伸ばす。
 苦手なんじゃないかと突っ込んだら、苦手だけど張り付く感じがクセになると、屁理屈を捏ねた。

 その日もロイドは帰りが遅く、三人だけで夕食を摂り、いつものように十時には、それぞれの部屋に引き上げた。

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