バイナリー・ハート
8.真相
まるで時が止まったかのように、二人して黙ったまま見つめ合った。
リビングの大きな窓から差し込む、午後の柔らかな日射しが、ランシュの髪をキラキラと眩しく縁取る。
まるで天使の後光のようだと、全く関係ない事を結衣は思っていた。
ランシュは結衣が、ロイドの妻だと知っている。
好きだと言っても、深い意味はないのかもしれない。
けれどロイドは、ヤキモチを焼いていた。
もしかしてロイドは、ランシュの気持ちを知っていたのだろうか。
だからランシュに冷たい態度を取り、気を許すなと忠告したのだろうか。
憶測では結論が出ない。
ランシュに直接、どういう意味なのか確かめなければ。
「あ、あの……」
結衣が意を決して口を開くと、ランシュはそれを遮るように更に抱き寄せ、耳元で囁いた。
「ずっと好きだったんだ。ユイが結婚してるなんて知らなかったから」
どうやら、軽い意味ではないらしい。