バイナリー・ハート
「おばあちゃんからユイのことを聞いて、会ってみたくなったんだ。ユイはいつも笑顔で迎えてくれて、おばあちゃんの事をちゃんと覚えてて心配してくれたし、おばあちゃんの言った通りの人だった。通ってる内にどんどん好きになってた。おばあちゃんが亡くなった後、家を出てしばらく街をうろついていたけど、ユイに会いたくなって、気が付いたら、ここに来てた」
どんな気持ちだったんだろう。
自分の想いを寄せる人が、すでに他人のものだと知った時。
いつもロイドにニブイと言われていたが、今までそれを、これほど残酷な事だと思った事はなかった。
ランシュの気持ちに気付かず、軽い気持ちで彼を好きだと言ったり、目の前でロイドとキスをしたり、ロイドの事で浮かれたり、知らず知らずに傷つけていた。
行く当てのないランシュは、見ているのが辛くても、出て行く事ができないのに。
そしてまた、彼の気持ちを知った上で、もう一度傷つけなければならない。
ランシュの想いに応える事はできないから。
「ランシュ……」