バイナリー・ハート
ランシュは少し間を置いて、意地悪な笑みを浮かべた。
「でもオレの能力の限界値を知ったら、怖くなるかもしれないよ。分かってるだろうけど、オレには絶対命令がないしね」
「無駄よ。私を怖がらせて、出て行ってって言わせようとしてるでしょ。絶対命令なんかなくったって、ランシュが人を傷つける事はないって知ってるもの」
「どうして、そう言いきれるの?」
「ランシュには心があるから」
結衣がキッパリと言い切ると、ランシュは一瞬目を見開き、そして悲しそうな笑顔を見せた。
「あるのかな。オレにもよく分からない」
ランシュは今の自分の心や気持ちが、本当に自分のものなのか分からないと漏らした事があった。