バイナリー・ハート
かつてロイドが言っていた事を思い出す。
『こちらのアクションに対して、いくら表情豊かに反応しても、それは内蔵プログラムと人工知能が計算によって導き出した結果でしかない』
ロイドは現存するヒューマノイド・ロボットには、感情がないと言っていた。
今のランシュの身体は、本人も認めている通り、彼が設計製造したヒューマノイド・ロボットなのだろう。
おそらく過去の記憶は、人だった頃のランシュのものだ。
その記憶を元に、内蔵プログラムと人工知能が、今のランシュの感情を作り出している。
理屈はそういったところだろう。
結衣は人だった頃のランシュを知らない。
けれど今のランシュの複雑な表情、感情の動き、結衣を好きだと言った恋心、これが全て作り物だとは、どうしても思えない。
人だろうとロボットだろうと、ランシュはランシュなのだ。
今のランシュに感情があるなら、過去の記憶にとらわれることなく、ロイドとの和解の道を見いだす事が、きっと出来るはず。