バイナリー・ハート
ランシュが手を伸ばし、結衣を突き飛ばした。
その腕の上に、テーブルから流れ落ちた、熱いお茶がかかる。
「あっつっ……!」
ランシュは腕を押さえて、背中を丸める。
「ランシュ!」
結衣とロイドは同時に叫んだ。
お茶をかぶったランシュの手が、みるみる赤くなる。
俯いて痛そうに歪められた、ランシュの表情。
これが本当にロボット?
結衣が動けないでいると、ロイドがランシュに駆け寄った。
「すぐに水で冷やせ」
抱きかかえるようにしてランシュを立たせると、ロイドは結衣に早口で尋ねる。
「おまえは?」
呆然とランシュを見つめていた結衣は、ハッとして我に返った。
「わ、私は大丈夫」
「そうか」
ロイドはランシュを連れて、小走りにキッチンへ入っていった。