バイナリー・ハート


 ランシュが結衣に研究内容をしゃべった事がロイドに知られると、二人の確執が益々深まりかねないからだ。
 なんとかして、それとなくロイドに知らせなければ。

 何かいい方法はないものかと焦りながら、結衣は意味もなく部屋の中をキョロキョロ眺め回す。

 ふとリビングのテーブルに置かれた、小鳥に目が止まった。
 昨日の事を思い出し、名案を思い付いた。
 ロイドなら気付いてくれるはずだ。

 結衣は小鳥に歩み寄り、手に取った。


「ロイド、ごめんね。後でちょっとだけ協力して」


 小鳥に話しかけ再びテーブルに戻した時、キッチンからロイドが呼んだ。


「ユイ、薬と包帯を持ってきてくれ」


 ランシュの腕を取りタオルで押さえながら、ロイドがリビングにやってきた。
 結衣は言われた通り、戸棚から救急箱を取り出してロイドに渡す。

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