バイナリー・ハート


 ランシュをソファに座らせ、ロイドもその横に座った。
 ロイドは濡れたシャツの袖をはさみで切り裂いて、薬を塗ったガーゼを赤くなったランシュの腕に乗せる。


「痛むか?」
「少し……」


 包帯を巻きながら、ロイドはいたわるように語りかける。
 結衣は側に立って、その様子を黙って見つめていた。

 やはりロイドは、ランシュの正体を疑ってもいない。


「おまえ、病院には行けないんだろう? 口の堅い医者を呼んでやるから、後でちゃんと診てもらえ」

「分かりました」


 ロイドが包帯を巻き終わると、ランシュは立ち上がった。


「着替えてきます」


 そう言ってランシュは、リビングを出て行った。

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