バイナリー・ハート
今朝、ランシュがロボットである事が発覚した。
熱湯をかぶって火傷を負ったはずのランシュの腕は、何事もなかったかのように、元通りになっていた。
「おまえは、何なんだ?」
すっかり動揺して尋ねるロイドに、ランシュは薄い笑みを浮かべて、静かに答える。
「ランシュ=バージュです。正確には、ランシュ=バージュの記憶をコピーした、ヒューマノイド・ロボットです」
その言葉に、ロイドは目の前が真っ暗になったような気がした。
このロボットは、ランシュ本人が設計製造したものだろう。
そして自分の記憶をコピーしたのだ。
人の記憶を他の人やロボットなどに、コピーする事は法律で禁じられている。
記憶には本人しか知り得ない情報が多く含まれる。
それを他人が知っていては、個人の特定が出来なくなるからだ。