バイナリー・ハート
「オレの身体は人間そっくりに作られてるんですよ。当然ながら絶対命令なんてインプットされていません。だから気をつけてください。痛い事されたら、うっかりあなたを傷つけてしまうかもしれませんよ。今のオレは二年前と違って、あなたの首を片手でへし折る事だって出来るんですから」
息が苦しくなり、ロイドは顔を歪める。
その様子を見て、ランシュはフッと目を細め、手を離した。
ロイドは首を押さえ、激しく咳き込む。
しばらく咳き込んだ後、ロイドはランシュに尋ねた。
「おまえ、まさか……オレの家に来るために、邪魔になったベル=グラーヴを手にかけたんじゃないだろうな?」
ランシュが家にやってきた事と、ベル=グラーヴが亡くなった事が、あまりにタイミングよすぎて、ふと不安に駆られた。
ランシュは薄笑いを浮かべたまま、含みのある言い方をする。
「さぁ、どうでしょう? 非力な老人の息の根を止める事くらい、オレにとっては造作もない事ですけどね」