バイナリー・ハート


 真偽のほどは定かではない。
 ランシュの表情から、それは読み取れない。

 ロボットのランシュは、相手に悟られないように感情を殺す事など、それこそ造作もない事だろう。

 逆にこちらの心の動揺は、丸見えに違いない。

 ダメージセンサの他にも、高性能なセンサ類を搭載しているであろうランシュは、心拍数、呼吸数、体温、発汗、瞳の動きなどから、相手の心理状態がある程度把握できる。

 おそらく聴覚、視覚も人並み以上だ。
 それでこの二年間、誰にも見つからず、身を隠す事が出来たのだろう。

 ロイドはひと息ついて、もう一つ気になっていた事を尋ねた。


「ランシュはどうなった?」

「肉体の事ですか? それなら二年前に滅びました。もっともオレには死んだという意識はありませんけどね。目が覚めたら、身体がロボットになってて、数ヶ月経ってたって感覚です」

「おまえはランシュじゃない。ランシュの亡霊だ」

< 188 / 263 >

この作品をシェア

pagetop