バイナリー・ハート
4.宣告
「おまえ、ベル=グラーヴを手にかけてはいないんだろう?」
ユイの淹れてくれた茶をひとつ、ランシュに差し出しながら、ロイドは問いかけた。
今朝のランシュの含みのある言い方が気になったので、仕事の合間に調べてみたのだ。
ベル=グラーヴの死因は肺炎だった。
ランシュは受け取った茶を、ひざの上に乗せた。
両手でカップを包み、俯いてそれを見つめる。
「直接手を下してはないけど、オレが見殺しにしたようなものです」
ベル=グラーヴは、亡くなる二週間ほど前に風邪をひいた。
最初は軽い咳と微熱だけだったという。
かなりな高齢なので、ランシュは病院に行く事を勧めたらしい。
だがベルは、薬を飲んで少し休めば治るから、と断った。ところが三日経っても熱は下がらず、咳も益々酷くなる。