バイナリー・ハート
少しの間笑った後、ランシュは握った手を結衣に差し出した。
「ユイ、これ受け取って」
「何?」
結衣の手の平にランシュが乗せたものは、小さくて四角いロボットだった。
底面には小さな車輪が三つ付いていて、頭には触覚のようなものが二本生えている。
「プレゼント。ゆうべ突貫で作ったから、こんなものしかできなくて。前に話した脳のないロボットだよ」
「へぇ。この子、何が出来るの?」
「迷路探査。この触覚は立体迷路用のセンサで、底にあるセンサは濃い色の付いた線を辿るように出来てる。紙に線を描いて辿らせるとおもしろいよ」
「うん。後でやってみる」
「ちゃんと見張っててね。時々、あさっての方に走っていくと思うから」
「わかった。ありがとう」
結衣が笑って頷くと、ランシュは満足したように微笑んだ。