バイナリー・ハート
6.決断
ユイが起きてしばらく経った頃、寝室の扉がノックされ、ロイドは目を開いた。
ゆうべは、ほとんど眠れなかった。
ランシュがコッソリ出て行く事を期待して、ウトウトしては目を覚ます事を繰り返した。
だがそれも徒労に終わったようだ。
扉の外から、耳慣れた声が聞こえる。
「先生、起きてますか?」
ロイドは大きくため息をついて、身体を起こす。
ベッドを出て答えた。
「起きている。入れ」
扉が開き、薄暗い室内にランシュが入ってきた。
それにチラリと視線を送り、ロイドは窓辺に寄って、カーテンを勢いよく開く。
ロイドの心とは対照的に、雲ひとつない青空と眩しい朝日が、寝不足の目の奥に刺すような痛みを与えた。