バイナリー・ハート
ランシュは俯いて、気まずそうにつぶやいた。
「あなたにだけは、最後まで知られたくなかったな」
「そんなの見てりゃわかる。おまえは昔より表情が豊かになってるし」
「ユイには、はっきり言うまで気付いてもらえませんでしたけど」
二年前の自分を思い出して、ロイドはため息を漏らす。
「あいつは激ニブだからな」
しかし、ハタと気付いて、声を上げた。
「……って、はっきり言ったのか?」
全く悪びれた様子もなく、ランシュは照れくさそうに笑う。
「安心して下さい。ふられました」
「当たり前だ。あいつはオレの妻だ」
少し腰を浮かせて額を叩くと、ランシュはおどけたように首をすくめた。