バイナリー・ハート


 ロボットはエネルギーが切れれば停止するが、充電すればまた動き出す。
 完全に機能停止させるのは、そう容易な事ではないのだ。

 ロイドは立ち上がり、ランシュの頭を撫でた。


「冷酷なオレを、恨んでもいいぞ」


 ランシュはロイドを見上げて、クスリと笑った。


「恨んだ事もありましたが、今は恨んでいません。ずっとあなたを尊敬していました。あなたに追いつきたくて、あなたに褒めてもらいたくて、オレは高みを目指したんです。オレの生涯をかけた、最高の研究成果をあなたに捧げます。この身体を受け取って下さい」


 そう言ってランシュは、一枚のメモリカードをロイドに差し出した。

 ロイドは受け取ったカードを眺めながら、ランシュに問いかける。


「何だ?」

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