バイナリー・ハート
副局長のフェティは家が近いのもあって、いつも早く出勤している。
今頃の時間は、すでに自分の研究室にいるはずだ。
科学技術局への発信ボタンを押そうとした時、ふと視界の端に人影がよぎった。
見ると、てっきり洗い物をしていると思っていたユイが、リビングの隅に立っていた。
これからのやり取りをユイに聞かれて、邪魔をされては面倒だ。
ロイドは手を止め、ユイに言う。
「ユイ、悪いが……」
「邪魔しないから」
席を外してもらおうと思ったら、話し終わる前にユイが拒否した。
一歩も退かないという強い意志を孕んだ目で、ロイドを真っ直ぐに見つめる。
「見届けたいの」
「何を……」