バイナリー・ハート
「後で連れて行く。幹部たちに知らせておいてくれ。詳しい事はその時話す。医療チェックの手配も頼む」
「わかりました」
機械的に返事をした後、フェティの視線はランシュに注がれる。
ガラス玉のように澄んだ青い瞳に、みるみる涙が滲む。
フェティは片手で口元を覆いながらつぶやいた。
「よかった……。よく無事で……」
ランシュは静かに答える。
「後でお伺いします」
「えぇ、待ってるわ」
互いに頷きあって、二人は電話を切った。
電話を終えたランシュが、もの言いたげにロイドを見上げた。
その時、部屋の隅からユイが声を上げた。
「ランシュ!」
ユイは目に涙を浮かべながら、笑顔で駆け寄ってきた。